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アトリエ通信〜アラスカ野生動物画家きむらけい〜

アラスカ野生動物画家きむらけいの日々徒然

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エゾヒグマ遭遇事件 後編「函館ヒグマ事件」

遭遇体験のシーン全てがトラウマとなりました。

初めて釣った北海道の道南地方の川。
朝からパートナーとフライフィッシングを楽しんでいました。
午後3時頃、急に辺りの雰囲気が変わり、
周囲の森から何者かにじっと見られている視線を感じて
何だかわからない胸騒ぎに苛まれ、
鳥肌が立ち動機が激しくなった事を覚えています。

bIMGP0896.jpg
美しい清流の妖精、ヤマメ

3時20分に林道へ上がりリンリンと盛大にベアベルを鳴らして歩いている間、
クマの濃厚なニオイがすると警戒しまくるパートナー。
雑木林の中ではパシ。パシ。と乾いた枝を折る様な音が鳴っていました。

10分後、ようやく林道に停車している車に着きひと安心。
ドアを開きトランクを開け、ロッドを収納しウエーダーを脱ごうとした時
かなり近くでパシっ。先程よりももっと大きな音が聞こえました。
と。雑木林の中からそろり。
ヒグマの大きな顔と大きな左前足が出て来た時の恐怖は表現出来ません。
パートナーに「車に入れ」と叫び、大慌てで車に逃げ込むのが精一杯。
(実際は顔面蒼白で「く、くるまっ!!!」「くるまあっ!!!」と
叫んだだけだったらしい)

車に逃げ込んだものの、ハッチバックのトランクが開いたまま。
これではヒグマに車内に侵入される可能性もあり、
閉めなければと思っても身体が硬直し、まったく動けないのです。
ヒグマは運転席側の約10m先の地点で相変わらずこちらを窺ったまま。
明らかに狙われているのは、自分。

エンジンをかけて発進しようとするも、キーが見当たりません。

トランクは助手席のパートナーが外に出て俊足で後部に回り、
地面に置き去りのままの靴も回収し、素早く閉めてくれました。
申し訳ない気持ちで一杯です。
ヒグマを見たのは私だけで、彼女は終止このヒグマを見ていません。
見たら狙われると思い、あえて下を向いたままだったそうです。
人生で一番早く走れたと言っていました。

トランクが閉められ、ようやく落ち着きを取り戻した私は、
自分のお尻で下敷きになっている哀れなキーにやっと気が付きました。
エンジンをかけクラクションを盛大に鳴らしながら林道を走り国道へ。
10分後に居眠り用のパーキングスペースを見つけ、
車から降りてウエーダーを脱ごうとするものの
体が震えてうまく脱げずパートナーに手伝ってもらう有様。
また緊張から開放された為、一気に冷や汗が全身を覆い、
虚脱感に苛まれてヘトヘトになってしまいました。

自分に危機が迫った場合、
かなり早い段階で違和感を感じる能力が存在するのが判明したのは収穫です。
恐怖が最高潮に達してしまうと身体がまったく動かなくなるのですね。
守るべきパートナーを危機にさらすようではいけないのです。

なぜクマに狙われたのか。
思い当たるのが匂い。
アラスカでは食べ物や食べ終わった紙くずも全てパウチに必ず収納、
匂いが漏れないように徹底するのが常識ですが、
この日はコンビニのビニール袋に食べ終えたお握りのパッケージを
梅干しや筋子などの一部が付着したままザックに入れていました。
ビニール袋の上部はくくっていましたが匂いは漏れます。

また明らかに雰囲気がおかしいのに車に着いて安心してしまうのも不覚です。
そこは舗装された林道でも、
彼らクマ達のテリトリーであることに変わりはないのですから。
速やかに車に乗り込み、安全な所まで移動してから着替えれば良いのです。
場所が変わり国内となると油断し基本を忘れてしまっていました。

初心者や臆病な人ほど常に細心の注意を払います。
恐怖感が慎重な行動をさせるのです。
経験者は慣れという油断が生じ隙が生まれます。
初心の頃の「大自然に対する畏敬の念」を持ち続ける重要さを、
あらためて認識した遭遇体験となりました。

千歳の友人の言葉が忘れられません。
「40年近く山で釣りをして来たけどヒグマなんて2回しか見ていないよ」
「そんなに簡単に見れないし出ないよ」
私達は2回目の釣行でこの有様でしたから。
自然界をなめるといけませんねぇ。

北海道では当分は単独やパートナーと2人で山の奥地へ入らず、
中流から下流域で大物を狙うことにします。
とはいえ下流域の町中の郵便局近くや
国道沿いの土手にもヒグマの足跡はありました。
やはり土地の友人かガイドに案内してもらう方が安心です。
人数が増えれば襲われる確立が減る事は科学的な事実です。

でも私はこんなに恐ろしい体験をしても
クマに対する憧れや愛情は変わらないのです。
願わくば彼らがいつまでも変わりなく
平和に森で暮らせる環境でありますように。

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千歳の友人とご家族のあたたかいおもてなし。ジンギスカンやエゾシカ、新鮮な魚介類と野菜。
ご親切にしてくださる地元の方達と、おいしい北の大地のめぐみに感謝。


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そして、この旅の相棒、レンタカー。No.がしろく(ま)だった。


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bear | コメント:2 | トラックバック:0 |
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