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アトリエ通信〜アラスカ野生動物画家きむらけい〜

アラスカ野生動物画家きむらけいの日々徒然

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友人からの贈り物 その6[完結]

友人からの贈り物 その5の続き

翌朝、迎えに来てくれたフィッシングガイドR氏に
深夜の玄関で起きた不思議な体験は伏せて
昨夜のオーロラの事を話してみると
「それってSのプレゼントだよ」とにっこり。

その日はキーナイリバー上流でシルバーサーモン釣り。
ふと対岸に目をやると大きなブラウンベアが!
いわゆるアラスカヒグマ、グリズリーなのですが、
このように特に巨大で少し明るい茶色い毛並みを持つものは
ブラウンと呼ばれキーナイエリアに数多く生息しています。

川の中洲で私と向き合って釣っているパートナーとR氏は気がつきません。
「後ろにブラウンがいるぜ」と伝えると2人はびっくり。
パートナーが初めて見るブラウンベアでした。
まだ若いクマ。遊びが過ぎたのでしょうか
火照った体を冷やすようにとっぷりと川に浸かっていました。
R氏は「これもSのプレゼントだな。
クマがこれ以上近づかないようにしてくれたのも彼だ」
と言って微笑みました。

R氏の中にもSさんは生き続けているようです。



翌年の夏、R氏の紹介でクマの観察を目的とした
西アラスカのテント式の野外キャンプ場で
パートナーと共に料理番兼雑用係として
(空き時間はクマ取材してもいいという条件で)
ボランティアで働く事になりました。
客室と従業員の部屋は大型のテント。
クマの対処の関係から木造のキャビンにキッチンがありました。
料理番の私達の寝室はこのキャビンの屋根裏部屋。

勤務当初、私の英語力の低さにキャンプ場のボスはナーバスでした。
が、2〜3日もすると仕事に慣れ
料理の腕を認めてくれたボスと次第に打ち解けてきました。

そのきっかけとなったのはSさんだったのです。

R氏からボスはSさんの親友だと聞いていたので
思い切って「あなたはSさんと友人だそうですね」と切り出してみました。
ボスはいぶかしそうな表情で
「Sってブッシュマスターの事か?」と。
「そうです。ボス。私達はSさんの友人でした」と答えると
それまでほとんど笑顔を見せなかった彼が
満面の笑みで両手を広げ私を抱きしめてくれたのです。
Sさんを亡くした心の傷をなぐさめあうように。
そして「なぜSが死んだのかわからないよ」と無表情に言いました。

ボスは私達をキャビンの少し離れた窪地に案内し
「ここはSがテントを張っていたサイト跡だよ」と教えてくれました。
この施設を立ち上げるチームにSさんは参加していたのです。
「こんなクマだらけのところで一人でテントに寝泊まりしてた」
「ヤツはホントにクレイジーだったよ」
ボスはそう言うと豪快に笑いながら自分のテントに戻って行きました。

パートナーと2人、その場で静かに手を合わせました。
Sさんのテントサイト跡には低い草が生え始め、
数輪のヒオウギアヤメも咲いていました。
時が経てばこのサイト跡はすっかり植物に埋め尽くされ
元の原生林の姿に戻って行くでしょう。

そして時折この場所に一人静かに佇む
パートナーの姿を見かけたのでした。

ヒオウギアヤメ

Sさんサイト

bearcamp.jpg

親愛なるSさんに捧ぐ

Fin.
友人からの贈り物 その1
友人からの贈り物 その2
友人からの贈り物 その3
友人からの贈り物 その4
友人からの贈り物 その5


* * * * * * * * * * *

すっかり長編となってしまいましたが
お楽しみいただけたら幸いです。

私達はアラスカでオーロラを見る度に
優しかったSさんを思い出すのです。
彼が立ち上げた西アラスカのキャンプでのエピソードは
また別の機会に…。
個性的なボスをはじめマヒマヒを愛して止まないスタッフや
美しき女性が登場します。
ぜひおつきあいくださいませ。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。
皆様にとって新年が幸多き素晴らしい年となりますように。



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友人からの贈り物 その5

友人からの贈り物 その4の続き

その場に立ちすくんだまま、しばしの沈黙の後
パートナーが口を開きました。
「これって…どういう事?誰か、来た?」
私「……………………。あぁっ!そうか!もしかして!」
パートナー「えっ!Sさん?」
私「そうだよ。きっとそうだよ。あの人っておちゃめだから。
僕達をおどかそうとして仲間とコテージの裏に回って窓叩いたりとかしてたし」
パートナー「そうだよねっ。いつものように会いに来てくれたんだ。
そうか。だからワンちゃんこんな困った顔してたんだ。
大丈夫、あの人はお友達なんだよ(としゃがんでワンちゃんをなでる)」
私「侵入者や動物なら間違いなく攻撃的に吠えるしね」

そして私はロッジの中にSさんの気配を感じたのです。
薄暗いロッジの中が明るくて温かい雰囲気に満ちあふれていて
ほんわかと楽しい気分になってきました。

今日一日寂しくて悲しい思いをした私達に
元気な姿を見せに来てくれたのだろうか。
彼は今、私達の側にいるのだろうか。

玄関ドアを閉め2階に上ると同時に
車のエンジン音とヘッドライトが近づいてきました。
ロッジのオーナー夫妻とゲストの6人が帰宅。
それまでの静寂から一変、寝ていたもう一頭のワンちゃんも起きて来て
パーティーの様な雰囲気になりました。
その中でSさんの気配は相変わらずみんなの輪の中にあって
ニコニコと微笑んでいるように感じました。

dogs.jpg

真夜中になって全員が就寝した中、私は目が冴え渡っていました。
悲しいやら、少し嬉しいやら、かなり興奮していたのだと思います。

Sさんはもういない。

だけどこうやってアラスカにいれば
時々会いに来てくれそうだ。
そう考えると悲しさが和らぎました。

明け方の5時位になって一階のトイレへ行きました。
階段の途中にある小窓から外を眺めると美しい星空。
今日も晴天のようです。
いくつもの小さな雲が流れていました。
その中のひとつがフワリ、と広がり
ふっとかき消えたように見えました。
目を凝らして見ていると周辺の薄い雲と思っていたのが発光し
形が変わっていく事に気がつきました。

オーロラだっ!!!!

階段を駆け上がり眠っているパートナーに向って
「ノーザンライツだよ」と叫びました。
慌てて飛び起きるパートナー。
これが私達にとって初めてみるオーロラでした。
(こちらではノーザンライツ、極北光と呼ばれている)

2人で見上げていると、白い光のカーテンは
エメラルドグリーンに変化し
やがてキーナイの森の上空一面に大きく広がり始めました。
優雅な光が音も無く生き物のように夜空に舞っています。
オーロラに透けてみえる星々の輝き。
宇宙の大いなる神秘を感じました。

満面の笑みを見せて振り返ったパートナーが一言。
「これってプレゼントだよね」
私「そうだよ。彼はあなたが悲しむから用意したんだと思うよ」
パートナー「今夜オーロラが出る事を教えに来てくれたんだね」
私「いずれにしてもまたお礼しなきゃね」

本当にありがとう。Sさん。

オーロラは約30分の間キーナイの空を美しく彩り
やがてゆっくりと夜空に吸い込まれて行きました。

私達はこうして友人からのプレゼントを
確かに受け取ったのです。

残念ながら写真を撮ることをすっかり忘れていましたが
今でも心の中に、あのオーロラはくっきりと焼き付いています。


次回最終回へ続く。
友人からの贈り物 その1
友人からの贈り物 その2
友人からの贈り物 その3
友人からの贈り物 その4



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友人からの贈り物 その4



友人からの贈り物 その3の続き

2階の寝室で長い沈黙の時間が流れました。
リビングにいるワンちゃんの警戒警報は一度きりでしたが
彼女の緊張感は2階にいても感じる事が出来ました。

しばらくして少し落ち着きを取り戻した私は
パートナーを寝室に残し1階のリビングへ様子を見に行きました。
階段をゆっくりと足音を立てずに下り
通路からリビング奥のドアと両サイドの窓枠を観察。
ワンちゃんは玄関側のリビングから台所まで移動、警戒態勢は解除しています。
慎重にリビングに近づき中から窓を通して外を観察。

動物の気配はありません。

玄関のドアノブを回し重い扉を開け外に顔を出しました。
クマの気配やニオイは無くムースの姿もありません。
リビングの明りを付けて外に出て玄関周りと駐車場をくまなく点検。
目新しい動物の足跡は一つも見当たりませんでした。

もしかしたらオオカミが通過しただけだったのかも知れません。
外の冷たい空気を吸い込んで前方に目をやると
少し高台にあるR氏の家にはまだ明りが灯っていました。

ドアを閉め2階へ上がりパートナーに異常なしの報告。
パートナーも安心しシャワー室へ。
その際リビング中央のしっかりと閉じられた玄関ドアをパートナーに見せ、
念のためシャワー室の内カギをかけるように指示しました。
2階へ戻って明日の釣りの準備を終えると
ベッドの上でいつしか眠りこんでいましたが
血相を変えたパートナーに揺り起こされました。

パートナー「あなた私がシャワー室にいる間に1階に来た?」
私「いや。」
パートナー「リビングの玄関ドアが全開なんだけど」
私「うそっ!!!!ワンちゃんは?」
パートナー「それが私がシャワー室から出たら足元に来て、
ものすごく困った顔で見上げてくる。怯えているんじゃなくて、困惑しているの」
私「えぇーっ!!!」

慌てて一階に下りるとワンちゃんが足元にやって来て
私に何かを伝えようとしています。
パートナーが言った通り眉間にしわを寄せて明らかに困った顔をしているのです。

真っ暗なリビングの中央の玄関ドアは180度全開で
室内から真っ暗な森が見えていました。
周囲の森からの冷たい空気がリビンク一杯に満ちていました。
ワンちゃんが丸いドアノブを回して重たい扉を引くなどは不可能だし、
たとえできたとしても躾が完璧にされているのでそれはあり得ません。
これは間違いなく人間が外から円形のドアノブを回して
押し開けないとこんな状態にはなり得ないのです。

外に出て動物がいるか確認しましたが状況は先程と全く同じ。
駐車場に車は無く外出中の人達も帰宅していません。
念のために侵入者がいないか家中を確認しましたが
もう1匹のワンちゃんは相変わらず幸せそうに快眠中で何も異常は無いのです。

玄関ドアを閉め、パートナーとワンちゃん3人そろって
困惑した顔のままリビングに立ちすくみました。


次回へ続く。
友人からの贈り物 その1
友人からの贈り物 その2
友人からの贈り物 その3



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友人からの贈り物 その3

友人からの贈り物 その2の続き

R氏とのゴールデンカラーの秋のスティールヘッド釣りは不漁。
Sさんとの楽しい思い出と素敵な笑顔、彼がなぜ死を選んだのか…、
頭の中に色々な事が次々と浮かんでは消え釣りに集中できなかったのです。
また悲しい気持に満たされたこの日に限って
お天気は終日快晴で真っ青な美しい空がどことなく空々しいのでした。


golden.jpg

その夜R氏も寂しかったのでしょう。
私達を自宅に招いて夕食をご馳走してくれました。
楽しい夕食の後、お茶を飲みながらSさんの思い出話に花を咲かせ
アルバムに収められたSさんの写真を見せてくれたけど
楽しかった思い出とともに
Sさんがいなくなった事への寂しさがこみ上げてきて
みんなで目頭を熱くしました。

夜10時、明日の釣りの約束をしR氏の家を後にしました。
「車で送るから」とR氏が言ってくれましたが、
森の中の車道を3分も歩けば宿泊しているロッジに到着します。
「クマとムースに気をつけて」と送り出してくれた彼に
「ごちそうさま」と答えて懐中電灯を手にパートナーと歩き始めてすぐ
送ってもらえばよかったと激しく後悔しました。

アラスカの夜の森の暗闇。
それは手を伸ばせば真っ黒に染まるような漆黒。
あらゆる所から巨大な動物に見つめられている様な威圧感があり、
押し潰されそうな恐怖を感じます。
なにせキーナイの森には500キロ以上の巨大なヒグマと
1000キロの体重を誇る世界最大の鹿、ムース(ヘラジカ)の一大生息地。
この時期のムースは繁殖期、
ヒグマは冬眠前のためどちらもナーバスになっています。
パートナーとしっかり腕をつないで慎重に歩き
ロッジについた時には全身が冷や汗に包まれていました。

広いリビングの机には、ロッジオーナー夫妻と1組のゲストはサーモン釣りに出かけ
ソルドトナの町で食事し、バーで飲んでくるので帰りが深夜になるとの書き置き。
ロッジには私達と2匹のワンちゃんだけ。
1匹は早々に就寝したのか、お帰り、と笑顔で私達を出迎えたのは
ラブラドールレトリーバーの女の子でした。

私がシャワーを浴び2階の部屋のパートナーと交代しようとした時、
1階のリビングからワンちゃんのけたたましい鳴き声が響きました。

パートナー「クマか大型のムース!!いずれにしても何かに警戒する鳴き方だよ!」
私「クマならヤバい、ドアノブは丸い回転式だから開けられないだろうけど、
リビングの窓ガラスを破られると侵入される」

さっき森の中を歩いた時から尾行されたか。
食事の後に歩いたからニオイがヒグマを引き寄せたか。
もしリビングに侵入されるたら幅の広い階段を登り
2階まで上がってくるかもしれない。

シャワーですっかり流れた冷や汗がふたたび体を包み始めました。


次回へ続く。
友人からの贈り物 その1
友人からの贈り物 その2


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友人からの贈り物 その2

友人からの贈り物 その1の続き

2000年3月、アラスカの大切な友人Sさんを亡くしました。
手首を切って自らの命を絶ったのです。

9月末の素晴らしい秋晴れの日。
ゴールデンカラーと呼ばれるアラスカキーナイの黄金色の紅葉の中、
スティールヘッドを釣りにパートナーと出かけました。
フィッシングガイドR氏の運転する車中で
R氏から友人の死を知らされたのです。

SさんはR氏と私達共通の友人で、キーナイの老舗ロッジの名物ガイド。
R氏は彼が亡くなった3月に私達に知らせようと思いながら
秋に会うまで言い出せなかったそうです。

R氏「わからないんだよ、誰に聞いてもわからないんだ、自殺の理由が」
私達「……………………………」
R氏「実は亡くなる前日に彼から電話があってね、普通の世間話をした。
そんなそぶりも何も無かったんだ」

青すぎる空によけい悲しみを深くしたのを覚えています。

アラスカ開拓時代の金鉱堀りのようなワイルドな雰囲気で
狩りで仕留めたラクーンの帽子を被り、ガイド仲間から
ブッシュマスターと呼ばれたSさん。
いつも明るく素敵な笑顔と楽しいお話でゲストをむかえ、
サーモン釣り、ハンティング、ネイチャーガイド、野外キャンプ、登山と
何でもこなすスーパーガイド。
誰よりも自然を愛し、野生動物の生態から、天候の読み、
クマへの対処など全てに精通する超一流のナチュラリストでした。
世界中から彼を慕う大勢のゲストがこの地にやって来ました。

仕事仲間からの信頼も厚く誰からも慕われていて
人間関係のトラブルも無く順風満帆に見えました。
残された彼の周辺の誰もが理解出来ない突然の死。

彼が亡くなる半年前に会ったのが最後でした。
いつもと変わらぬ笑顔で抱き合い再会を喜び合いました。
その年、彼から送られたクリスマスカードには
「もうすぐ船で旅に出る」と書かれていました。
当時はクルーザーでゲストと一緒にシャチやザトウクジラ、氷河を求めて
アラスカ東南部の海でも旅するのかと思い込んでいましたが
本当はもっと深い意味が込められていたのかも知れません。

後部座席で大粒の涙を流して泣き崩れるパートナー。
Sさんとは新婚旅行で彼の勤務するロッジでお世話になり
特にパートナーにとってはかけがえのない恩人だったから。

フライフィッシングを覚え立てのパートナーにとって
初めて訪れた1996年夏のキーナイリバーは最悪のコンディション。
連日の好天で信じられない程の渇水で魚の活性が極端に低く、
腕利きのフィッシングガイドR氏の力も及ばず、
目的だったこの川の美しいニジマスを釣りあげることができないまま。

そんな中、ロッジのバーで一息入れている時
声をかけてもらったのがSさんとの初めての出会い。
日本人の祖母を持つクォーターの彼は
169センチの私よりも身長が低く小柄でしたが、
アラスカを象徴する様なワイルドな雰囲気と優しい人柄がにじみ出た
オーラのある人に見えました。

CCI00001.jpg
Sさんが衣装を貸してくれてロッジの部屋の前で記念撮影。

最終日、私達がカヌーでスワンレイクに行く予定を知ったSさんは
パートナーに4番クラスのライトフライロッドを一本持参するようにと
アドバイスしてくれたのです。
スワンレイクにはそれは美しいニジマスがいるからと
彼はフィッシングガイドから専用のドライフライを調達してくれました。
夏のアラスカらしい黒のモスキート(蚊)パターンのフライ。
手のひらに乗せるだけで何となく痒くなってくる様なリアルさです。
彼はカヌーガイドにポイントの説明をし「グッドラック」と
素敵なあの笑顔で送り出してくれたのでした。

CCI00002.jpg

パートナーは幻想的なスワンレイクで見事に
ワイルドなとても美しいニジマスを仕留めたのです。
パートナーは心の底から彼に感謝したに違いない。
Sさんは自分のことのように、大喜びしてくれました。
その日の夕方、SさんはじめR氏やロッジのスタッフの方々の祝福を受け、
幸せな夜を独り占めしたパートナーでした。

次回へ続く。



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開高さん

開高さん

私がアラスカ取材のベースにしているキーナイ半島。
野生動物の豊富さと濃い生息密度、
他の地域よりも大きな個体が多いこと、
そして美しい風景を織りなす雪山と大氷河、
豊かな森と川、湖、海など
多様な大自然のポテンシャルは
アラスカ随一だと思っています。

1970年代後半に芥川賞作家である開高 健氏が
この地、キーナイを訪れ、
巨大な魚と格闘し、雑誌に釣行記を連載。
偉大なる文豪の紀行文です。
愉快・痛快・壮快。タイトルは「オーパ!」。

1980年代にはビデオ「川は眠らない」を発表。
(DVDとして再販されています。)
開高さんと巨大なキングサーモンとの息詰る攻防の他、
キーナイ半島の美しい自然と野生動物達が
魅力たっぷり収められています。
企画されたのは開高さんのご友人、広告写真家の青柳氏。

人生で行き詰ったり、
悩んだり、
悲しい事があった時。
この映像の中で開高さんが語られている言葉に
幾度も助けられました。

「やりたいことをやりなさい」
「グラスの縁に口をつけたら一滴残らず飲み干しなさい」
「後で戻って来てもグラスの底に滴は残っていない」

偉大なる先生のお言葉を自分流に都合良く解釈。
パートナーと2人やりたい事をやりたい時に行い、
18年間(私は20年以上)心の故郷アラスカへ通い、
野生動物の絵を描き、大好きなフライフィッシングをして来ました。

私達がキーナイに惹かれた一番の理由は
オオカミと美しい氷河と雪山の存在でした。

機材が小型化されていなかった時代、
総重量2トンにもなる撮影機材を持ち込み撮影された美しい映像の多くは
アンカレッジからキーナイを結ぶ「スターリングハイウェイ」の道沿いから
ほんのすぐ近くの所で撮影されています。

80年代半ば景気もよろしかった頃ですので、
水上飛行機でバンバン奥地へ入って撮影する事も可能だったと思います。
もしかするとそんな映像も撮影されたのかも知れませんが。

私もアラスカの風景を描くために現地取材をしますが
資金をつぎ込んで
もっと奥地の前人未到のエリアに行けば、
より美しい風景に出会えるとは限らないのです。

人は何を見れば、何処を見れば、美しいと感じるのだろうか。

美しいキーナイの風景を捉え、
最高の映像美を仕上げたこの作品「川は眠らない」は
本当に素晴らしいものです。

1989年12月9日、開高さんは
58歳の若さでこの世を去りました。

あれから24年。

著書「オーパ!」の中で
「荒野の村に3本程の毛が生えた程度の町」と
開高さんが表現されたソルドドナの町やキーナイ空港の周辺にも
多くの住宅が増え巨大なスーパーも大きな道路も出来ました。
でもそれはほんの一部のスペース。
大自然と多くの野生動物と偉大なるキーナイ川は
当時と同じ姿を留めています。

美しい自然がいつも変わらずに存在する。
それはとても幸せなことだと思うのです。

アルコールは飲めない私ですが
いつか許されるなら、開高さんとグラスをかわし
キーナイのお話をしてみたいものです。

合掌。


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高台寺の紅葉

今月初め、パートナーの誕生祝いに
美しい紅葉シーズンまっただ中の
高台寺の拝観に行ってきました。

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鷲峰山 高台寺(高台寿聖禅寺)。
四季様々な表情を楽しめるとても美しい庭園があり
優雅で気品に満ちた寺観です。
この寺の最上階にある霊屋(おたまや)に眠っておられるのが、
豊臣秀吉夫人「北政所(ねね)」さん。

1598年に亡くなった夫、豊臣秀吉公の菩提を弔うため
ねねさんが1606年に高台寺を開創しました。
お寺の造営に莫大な財政援助をしたのが
意外なことに豊臣家の敵、徳川家康公。
1600年「関ヶ原の戦い」で豊臣家側の西軍を壊滅させ
1615年「大阪夏の陣」で豊臣家を滅亡へ追い込み大阪城を焼失させたのです。
大阪城落城の際には、小高い丘にある高台寺からも
空に立ち登る黒煙が見えたそうです。
赤黒く燃え上がる黒煙を眺め涙を流される
ねねさんのお姿があったと伝えられています。

豊臣家の滅亡後、ねねさんは心穏やかに、
ごく親しい人とゆっくりこの境内で余生を過ごされたそうです。

高台寺の境内は清々しく温かい雰囲気に満ちていて、
訪れる度、心が穏やかになります。

境内の出口付近に茶室があり、
美しい庭を眺めながら美味しいお抹茶でほっこり。

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bsDSC00245.jpg

そして近くに歴史あるお蕎麦屋さんがあり、
茶蕎麦とすぐに売り切れる焼きたてのみたらし団子が最高なのです。が
ねねさんにはもしかして、お見通しかも知れません。

「あなた、またお蕎麦とお団子が目当てで来るのでしょ」
そんなねねさんのお声が聞こえるように感じます。


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