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アトリエ通信〜アラスカ野生動物画家きむらけい〜

アラスカ野生動物画家きむらけいの日々徒然

オオカミの研究者

1月末、京都大学野生動物研究所センター長の幸島先生のご提案で、
オオカミをテーマに研究される植田先生のもとにお邪魔しました。
昨年に私が企画した「研究者と作家の共同研究」のための会談です。

同じ野生動物をフィールドで観察しても
研究者は生態の新たなる発見が最終目的で
ワイルドライフアート作家は
科学的な相違点の無い美しい作品の完成が最終目的。

研究者と作家が相互に情報を共有することで
研究者は作家サイドの「新鮮な視点」を得て新たな角度の研究に反映、
作家は研究者による生態の最深部の情報を基に
従来のワイルドライフアートの領域を「超えた」
より「科学的な」作品を制作します。

そして仕上がった作品はご協力下さった研究者の
ビジュアル的な生態研究資料として生かされなければなりません。
作家である私の責任であり最終目的地点です。

オオカミの研究者は実は世界的にも少数派で
植田先生が取り組まれている
「オオカミのコミュニケーション」についての研究はもっと希少だそうです。
非常に興味深い研究に
同行したオオカミとっても大好きなパートナーも興奮しっぱなし。

パートナーの同席を望んだのは
元獣医看護士としての医学的な知識を持った動物オタクな彼女に
作品制作の監修などサポートをしてもらっているので
植田先生からお聞きした掘り下げられた科学的情報を
私にかみくだいて解説してもらうためでした。

植田先生はカナダのスプルースの森や
アラスカのデナリ国立公園、
アメリカ本土のイエローストーン国立公園でシンリンオオカミを追われています。
イエローストーンでは巨大なバイソンに追跡されたエピソードもお聞きしました。
野生動物の研究には常に危険がつきまとうものなのです。
国内では主にジャック一家とアオイちゃんがいる
名古屋の東山動物園でご研究されています。

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植田先生とパートナーがテンション高く
(スピードについて行けない私)
心底楽しそうにオオカミ話で盛り上がる姿に
これからの作品制作にかなーーーりのプレッシャー。
これまで野生動物の美しさを求め続けてきたつもりですが
このオオカミ好きな二人にきっちり満足してもらえる
グレードで仕上げることを思うと、これまた責任重大なのです。

オオカミの作品制作は今のムースを仕上げた来月から着手。
完成後、生態の科学的な解説と共に公開しますので乞うご期待。


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将軍は芸術家

1月末、40年ぶりに京都東山にある世界遺産の山荘へ行ってきました。
「東山慈照寺(ひがしやまじしょうじ/通称銀閣寺)」です。
パートナーも遠足で訪れて以来の拝観。

出先で思いついたのでいつもの取材カメラを持たず、
ガラケー撮影でうまく撮れなかったのが残念。

40年前、今は亡き祖父に連れられてちらちらと小雪の舞う中、
北山の金閣寺、東山の銀閣寺の順で拝観しました。
幼かった私には金閣寺の華やかさと比べ
銀閣寺は色彩に乏しい地味な感じに見えたのです。

画家となり一般的な歴史知識も得た
今の自分の目に銀閣寺はどう映るのだろうか。

幼き日の自分とはまったく違い、
おっさんになった自分は
銀閣寺と庭園の美観に心を打たれ、癒され、ひたすら感動の嵐。

建立に携わられた方々、優秀なる庭師、
約530年に渡り庭園の美観を維持された方々の努力に
感謝と畏敬の念を持ちました。

庭園のどこを見ても手入れが行き届き、
木々の枝振りや角度、
大石の配置や小径など徹底的に計算され、
一切の妥協点も許さず美を追求した造り。

そこには何もかが美しく
完璧に調和した世界が広がっていたのです。

いつか銀閣寺を描いてみたい。

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銀閣寺は室町幕府8代将軍足利義政公が建立。
金閣寺を建立した3代将軍足利義満公の孫で
東山殿山荘造営の制作総指揮者でもあります。
相国寺の名だたる禅僧の協力のもと造園は進められますが、
残念ながら庭園内の一番最後に完成した
銀閣寺を見る事なく死去されています。

彼の生きた時代は室町幕府の動乱期。
大飢饉・災害・土一揆・浪費家の将軍夫人・欲深い守護大名・応仁の乱。
そんな中、政治と人間そのものに失望し、
美しい芸術の世界へ引き込まれたのだと思います。

義政公は銀閣寺建設の前、北山の金閣寺を訪れたそうです。
祖父の作った経済力や権力の象徴とされる金閣寺を
どんな思いで見つめていたのでしょう。

ここで美の求道者の名を冠する
「芸術家」足利義政公について考えてみます。

かつて銀閣寺は幕府の財政難から来る資金不足によって
外観に銀箔が張れなかったというお話を耳にしました。

ところが4年程前の修復工事の際の調査で
創建当時の外観は漆黒塗りであった事が判明。

この情報を知る前に銀閣寺の色彩についてパートナーと話した際
彼女から「私なら銀箔ではなく真っ黒に塗るよ」と聞いていたので、
史実を知った時は彼女の色彩センスに恐れ入ったものです。
私の案は「とりあえず銀箔を貼るだけは貼ってみたい。
黒く変色する問題は成った時に考えましょう」でした。
行き当たりばったり過ぎますね。

漆黒塗りは義政公の構想であったのかは現時点では不明ですが
私はこの配色センスは義政公のものだと考えています。

参拝の際に偶然聞き漏れてきたガイドさんの解説では
東山山荘は月の通過位置も計算された造りになっているそうです。
月は銀閣寺正面の池の上を通過していくのです。
月光が池にきらきらと反射し
漆黒塗りの銀閣寺外観がそのやわらかい光につつまれたなら。
さぞかし美しいことでしょう。

義政公は月の光まで計算に入れた設計を考えていたのかも。
そう、ひっそりと月夜の銀閣寺を観賞するのを楽しみに。
彼はなんてイマジネーション豊かな芸術家なのだろう。

私も本来の漆黒塗りの銀閣寺を
あの当時の姿を何としても見てみたいものです。
いつか、復刻されますように!




漆黒塗り復刻プロジェクトの可能性について
慈照寺様へ問い合せるととてもご親切にお答え下さいました。

『漆黒塗り復刻の可能性はございます。
復刻する場合には文化庁などのご判断も必要になり
慈照寺サイドだけで行う事は困難なので今後も関係各所とのお話が必要です。
漆黒塗りのシュミレーション映像なども制作いたしましたが
現在慈照寺内でも復刻の実施に関しては個々に意見が分かれます。

復刻をする場合には調査を更に進めてもっと詳しく
壮健当時の姿を明らかにする必要があります。
漆黒塗りの上に別の色で何かの模様が施されたりした可能性もあるからです。

漆が施されたのは当時貴重であった木材の経年劣化を防ぐ為と考えられます。
建設初期の段階から漆が黒色と決められていたのかは不明です。
塗ったのがたまたま黒色の漆であったという事かもしれません。
例えば赤色の漆を塗る事も当時は可能でしたから。
銀箔の使用については時間の経過に伴いやがて黒く変色してしまうため
壮健当時よりこの案は構想にはなかったのではと考えています。』


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氷河での不思議な出会い その2

昨年、大学の野生動物・自然環境の研究機関へ業務提携を提案しました。

ジオアートワークスの作品展示でお世話になっている
「千歳サケのふるさと館」の菊池副館長さんに相談し、
科学者と作家で合同調査のプロジェクトを実施するため
複数の大学や水産研究所の先生方にも
ご協力いただける運びとなりました。

「京都大学野生動物研究センター」も
ご協力いただいた研究機関の一つです。

京都大学の自然科学研究の歴史は半世紀に及び、
日本国内はもとより世界中のフィールドで
あらゆる野生動物の研究を行ってきました。
すでに故人となられていますが
京都大学の名を高めた今西錦司先生と伊谷純一郎先生方の
霊長類研究は世界的に有名。
こうした偉大なる研究史の流れの中で
2008年「京都大学野生動物研究センター」が設立されました。

昨年5月、研究所に連絡し合同調査の協力を要請すると
ご親切にもセンター長の幸島司郎先生がお会い下さる事に。
HPで幸島先生の経歴を拝見し興味津々。
先生は物事に熱中すると社会の時の流れから多少脱線しても
納得が行くまでトコトン本質を突き詰めるタイプのようです。

実際にお会いすると偉大なる先生は実に気さくなお方でした。
幸島先生のお言葉。
「どのような物が出来上がるか想像がつかないけれど、
 科学者と作家お互いが触発されて新たな発見があるかも知れない。
 やってみましょう。これも実験ですよ」

野生動物や自然環境の調査において
科学者とワイルドライフアート作家では観察の視点が大きく異なり、
コラボすると、お互い思っても見なかった面白い発見が得られるのです。

こうして本年度「京都大学野生動物研究センター」と
ジオアートワークスの具体的な連携業務がスタートしました。

幸島先生と初めてお会いした日、
先のブログ記事「氷河での不思議な出会い その1」
4年前、私達がアラスカキーナイのハーディング氷河で見た
完全武装のクレイジーな謎の調査隊は
氷河に生息するアイスワーム(氷ミミズ)の調査をしていた
幸島先生率いる研究チームであった事が判明。

私 「えぇっ!じゃあの日危ない氷河の上で動いてたのは先生方?」
先生「そう。その頃は一ヶ月間あの山の上でテント住まいでしたよ」
私 「あそこにはブラックベア(アメリカクロクマ)がいるでしょ。
   私以前追いかけられたんですよ」
先生「あぁ。そうそう。たしかにクマいるねぇ」
私 「……。」

人の出会いやご縁とは実に不思議なものです。

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指の上の小さい虫がアイスワーム。
15年前の取材で現地の友人達と撮影してきた
アラスカのイクジット氷河でのショット。

そして昨年7月の2度目に行われた会談の際、
幸島先生より初代「京都大学野生動物研究センター」所長の
伊谷原一先生をご紹介いただきました。
この方は先にご紹介した霊長類研究で有名な伊谷純一郎先生のご子息。
アフリカや砂漠地帯など熱帯地域の研究が専門で
動物調査の目的なら紛争地帯にも行かれます。

将来はアフリカの野生動物も描いてみたいと言った私に
「きむらさん。うかうかしていると死にますよぉ〜」と
ニコニコと笑顔で身震いする様な
現地での身の危険をありありと実感できるお話を聞かせて下さる
伊谷先生なのでした。

研究のためなら命もかけてしまわれるのですね。
まあ野生動物に関わるのは時に命の危険も伴うものですが
よもや紛争地帯のことまでは思い及びませんでした。
人間の方がオソロシイ。

こうして研究に熱き心を注がれている先生方と
お仕事ができるのはとても光栄なことです。
先生方の情熱に負けないような作品を仕上げなくては。


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氷河での不思議な出会い その1

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今から4年前、アラスカキーナイの高山帯で
マウンテンゴート(山岳ヤギ)やマーモットの取材調査をしていました。
息を飲む様な素晴らしい氷河を望める登山ルートで
氷河を崖の上からへっぴり腰で見下ろしながらの取材です。

ここはイグジット(出口)氷河と呼ばれる
アラスカを代表する巨大なハーディング氷河の一部。
ルピナスなどの高山植物も咲き乱れる絶景ポイントなのですが、
極北地の高地なので雪渓も多く、冬山用の登山靴など充分な装備が必要。
今回、私にとって2回目となる入山には
山岳部出身のパートナーも同行しました。

天候は小雨混じりの曇り空で氷河の撮影には絶好の日。
氷河は晴れの日には太陽光線の屈折の関係で
あの美しいグレイシアブルーではなく
白っぽい雪の塊に見えてしまうのです。
雨が強い日はモヤや霧が出やすくなりますので
曇り空が観測には最適と言われています。

登山道から氷河を見下ろしていると何やらモゴモゴと動くものを発見。
全身完全フル装備の5名の人間が氷河の上で調査をしているようです。
ナゾの調査隊はお互いをザイルで繋いで
ピッケルで表面の氷を砕いたりしていました。
地球温暖化の影響などを調査しているのだろうか。

彼らの足元にはバックリと裂けた巨大なクレバスが無数に刻まれており
足を滑らせて滑落したら最後。
ほんの少しのミスで簡単に命を落としてしまうでしょう。

パートナーと「いや〜クレイジーな人達だねぇ。」などと話しながら
ピークを目指して登って行きました。

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途中愛嬌たっぷりのpika(ナキウサギ)3匹、
「ももひき」をはいているような7頭のマウンテンゴートの群れと
ブラックベアの親子を確認。

5年前の単独調査時、山頂付近でうかつにも
一人楽しくドーナツとオレンジジュースの宴をしていたところ
巨大なブラックベアのオスが現れて追跡され
危うく命を落としかけた曰く付きの場所なのでした。
彼には「オレンジさん」と勝手に命名。
このお話はまたいつか。
写真は悠々と歩くオレンジさん。
比較対象できるものがないので彼の巨体ぶりがお伝えしきれないですが。

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この時に出会ったブラックベアの親子は
私を追跡したオレンジさんの
奥様とお子様の可能性が高いと思います。
お子様無邪気でかわいかったなあ。
しかし親子グマは一番危険な存在でもあるので慎重に。

ぐんぐん高度を上げて雪渓帯を越え頂上の少し手前の辺りで
曇り空を保っていた天候がついに悪化。
大きな雨粒と強風が吹き荒れ
低い姿勢を保たなければ吹き飛ばされそうな状態で
登頂を断念せざるをえず、下山。

今年8月にパートナーと再チャレンジする予定です。

そして4年後の2014年。
この時に見た氷河の上のクレイジーなナゾの調査隊の
目的とメンバーを知る事になったのです。

つづく。

bscGLACIER BLUE 青き氷河に
きむらけい GLACIER BLUE -青き氷河に-


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